2013年1月20日日曜日

アブラツノザメは社長か重役か

 あとは煮るなり焼くなり好きにしてくれ状態になっているアブラツノザメをゲット。どういう状態かと言うと、あのザラザラとした鮫肌そっくりな鮫皮(ややこしい)を剥がされた状態の棒ザメである。生前を想像するに全長60cm、ウエスト25cm、体重800g程度で、アブラツノザメとしては少し小振りのようだ。前にも書いたが、サメ肉は、理科室のあの不気味人形を思い浮かべてしまい、正直、食欲が素直に出てこない。

ハラス(下)は湯引きにして食べた
言われるままに味噌漬け焼きや、ホイル蒸しでも食べてみたが、素人調理がいけないのかも知れないけれども、あの微妙な柔らかさが苦手なのである。ただし刺身は旨い。これは本当に旨い。サメならではの味だと思う。サメ以外には無い独特の旨さだと感じる部分である。
 しかし、いくら小振りでもサメはサメである。一人で刺身だけで食べ尽くすには量が多い。さて、どうするか。困ったときのインターネットである。サメの利用方法を調べると「かまぼこ」がヒットした。しかし、真面目にかまぼこに取り組むのは面倒だし失敗するのも嫌だ。と、しばし考えた。かまぼこに良いのであれば、つみれもいけるはずだ。さっそく、サメを適当な大きさにぶつ切りし、フードプロセッサーにかけてみる。理科室人形のような赤白の筋肉が程よく混ざり合って、きれいな桃色のすり身が出来上がった。子供のころの絵の具で遊んだのを思い出す。


茹でると赤味は消える

さらに味噌(大さじ2)、片栗粉(大さじ1)を加えて、再び混ぜ合わせる。出来上がったすり身をスプーンですくい適当な大きさにして、熱湯で7~8分茹で上げる。これに、味噌と粉末だし(無添加もの)、それにネギを加えて、サメのつみれ汁が出来上がった。茹で上げると赤味が消え、生前の姿から少しは遠ざかるが、恐る恐るひとくち食べてみる。驚いたのなんの、これほど驚いたのは初めてというくらい驚いた。どう表現すれば良いだろうか。これはもうサメではない。つみれといえば、魚であればホッケやイワシ、鶏肉が思い浮かぶが、それぞれ素材の味が残っている。サメの場合、悪く言えば素材の味が消えてしまうが、あの独特な筋肉の繊維や何かが作用するのであろうか、あるいはあの眼に現れているように粘液質な性格によるのか、「サメのつみれ」ではなく「しっとりとした、とても美味しいつみれ」が出来上がる。サメと言われても信じられないに違いない。逆に言えば、つみれの味がサメの味ということかも知れない。

サメはツミレと名乗るべきかも


翌日の晩は「キムチ鍋」の具にして食べてみた。ホッケやイワシのつみれだと、自己主張が強そうだが、サメのつみれは、辛さをまろやかにし、かつ鍋の旨さを壊さずに味あわせてくれる。あの面構えだけから判断すると、一匹狼で、組織では使いづらい人材にしか見えず、面接で落とされるタイプであるが、実は、組織のまとめ役として適任者であった。人は見かけによらぬもの、恐るべしアブラツノザメ。社長の器ではないが、重役まではいけそうだ。

本日のレシピ

 サメのつみれ汁

 (1)つみれ・・・・・以下、をフードプロセッサーにかける。
  ①アブラツノザメ(棒ザメ):800g
  ②味噌:大さじ2
  ③片栗粉:大さじ1

 (2)味噌汁・・・・・熱湯で茹で上げた(1)に、以下を加え、出来上がり。
  ①味噌:適量
  ②粉末だし:適量
  ③ねぎ:適量


2013年1月8日火曜日

鰰寿し祭り

 ハタハタを使った秋田の郷土料理に「ハタハタ寿し」がある。「寿し」とはいっても江戸前に代表されるような握り寿司ではない。飯ずしの一種で、ハタハタ、ご飯、麹をベースに、かぶや大根、にんじん、ふのりなどをアクセントとして加え、杉の桶や漬物たるで重石をして漬け込んだものである。秋田でハタハタは、11月下旬から12月のごく短い間に、産卵のため浅瀬にどっと押し寄せてくるが、ハタハタ寿しは、この時期のハタハタを使い、1か月以上熟成させるもので、冬場の保存食として重要なものであった。それに、もともとは祝い料理とされ、年取りの日と元旦の祝い膳には欠かせないものでもあった。
 単に漬け込むとはいっても、製造過程は、地域によって、各家々によっても違うのである。ハタハタを下処理する際には、塩や酢を使うが、その際の手順や分量も違うし、ご飯や麹の配合、それに漬け込み期間も違っている。ハタハタ寿しは、お茶受けとして、また、酒肴としても良いものであるが、漬け込み方の話題であっという間に一時間は過ぎてしまうほどだ。ハタハタ寿しが無くとも酒が進むのである。
 実は我が家でも寿しを漬けることがあるが、ハタハタの下処理には数日かかるほか、漬け込む作業も、野菜などの材料を揃えるところから始めるとなれば一日がかりになる。漬物たるにすべての材料を敷き詰めた後、重石をして、ほっと一息つけるまでには、ほぼ一週間がかりになる。年の暮れの書き入れ時に、わざわざ漬け込むのはかなりタイミングが必要なのである。なので、今回、自家製作りは断念した。妻と共同作業でやれば良いのではとの指摘もあるが、我が家の場合、それは無理な注文なのである。それに、一度たりとも満足する仕上がりになったことが無い。妻が協力的ではない理由はそこにある。
 さて、潟上市にある道の駅「てんのう」では、「鰰寿し祭り」が行われている。正式名称は、市名を冠にして「潟上 鰰寿し祭り」という。今年から始まった。ということで、さっそく行って来てみた。祭りは道の駅構内の特設会場にて行われていた。祭りといっても、にぎやかなお囃子や踊りがある訳ではなく、品評会といった感じで、1月中の毎週日曜日、何人かの作り手が腕に自慢の鰰寿しを出品し、その出来栄えを来場者が味わい合うイベントだそうだ。


 近づいてみると、長方形に組まれた特設テーブルには、10名の作り手による10種類の「鰰寿し」がそれぞれ300g程度ずつパック詰めで陳列されている。かたわらには試食用の小さなタッパー容器がある。初日かつ開店一番であったのだが、すでに、年のころは60歳前後であろうか、おばさんグループが、特設テーブルを取り囲みながら試食をしている。
 おばさんグループの話を聞いていると、ご近所仲間のようで、「やっぱり〇〇さんの作ったのは、うめなぁ(美味しいなぁ)」とか、「△△さんの、人参だば、でっけぇなぁ(大きいなぁ)」だとか、「これはまだまだ熟れでねなぁ(熟成されていない)」などなどと話が盛り上がっている。会場は真冬のホールなので、決して暖かい場所ではないにもかかわらず、おばさんグループは、テーブルを廻りながら小一時間ほどは話し込んでいたようだ。




 実際、10種類もあるので、どれが美味しいか、自分の好みに合うか、いくつかに的を絞るまでに、会場のテーブルを、じっくり時間をかけて2回転はしなければならない。さらにその中から一番美味しいのはどれかを決めるには、少なくとももう1回転必要で、試食を重ねていると、ちびくろサンボのトラになったような気がしてくる。主催者に聞いてみると、次回はさらに多くの作り手のエントリーが予定されているそうなので、たくさんのトラが出てくることだろう。

加藤さん(推定年齢63歳)の漬けたハタハタ寿し
 今回、一番美味しいと感じたのは、加藤さんの品。原材料は、ハタハタ、うるち米、麹、大根、人参、生姜、ふのり、柚子、唐辛子、食塩、穀物酢、みりん。他の品と比べ、甘みがある中にも、生姜が効いていて、柚子のアクセントも清清しい。次回も楽しみだ。