2013年4月14日日曜日

春告藻(その1)

 春告花といえば全国的に梅、そして鳥といえばウグイスを指すようだ。魚では、秋田のそれはメバルとされるが、ニシンだったり、サワラだったり、イカナゴだったり、地域によって種類は違うけれども、春告魚と呼ばれる魚がいる。ならば、春を告げる海藻もあっていいだろう。
 ということで、春告藻。
 改めて調べてみると、春とは、天文学的には春分から夏至。気象学的にいえば陽暦で3~5月。季語にも使われる二十四節気では立春から立夏までだという。天文学者と気象学者と俳諧人とが春を語ったら喧嘩になるかも知れない。一番簡単に分かり易くして、春とは冬と夏の間という事にする。じゃあ、冬はいつまでなの?とか、夏はいつから?なんて考えないようにしてくださいね。
 そんなことはさておいて、本題の春告藻。秋田の場合、まずは2月頃から顔を見せ出して4月一杯が旬の「アオサ」を抜擢したい。全国的にアオサと言えば「ヒトエグサ」を指すことが多いが、秋田の場合は「ウスバアオノリ」。ちなみに沖縄で有名な「アーサー」はヒトエグサ。
おばちゃんA

おばちゃんB
4月初旬の男鹿半島の朝8時。おばちゃんA、おばちゃんBの二人がアオサ採りをしていた。聞けば、なんと5時から海に入っているという。春ではあるけれど水温は8℃。胴長靴を履いているとはいえ、水温8℃に3時間は大変だろう。水鳥は特殊な血管網を持つので、冷たい水に足を浸けていても平気らしいが、きっとこのおばちゃん達も特殊な能力を進化させているに違いない。


おばちゃんBの本日の収穫
一袋持たせてもらったが、ずしりと重い
侮るなかれ本当に重い 
アオサ採り専用の熊手
硬めの針金を使って、自分で作ったそうだ
 おばちゃん達が採ったアオサは、近くの漁協に水揚げされて、その後店頭に並ぶことになるが、そのまま、熱い味噌汁に入れても良し、酢の物でも良し。今回は天ぷらにしたが、口の中に爽やかな香りが広がり、春を実感する。

漁協にて
この地域でアオサを採って上場する人は、もう、おばちゃんA、Bしかいないそうだ


味噌汁にも良し。炊き込みごはんにも。余ったら佃煮にしても良し
  男鹿半島では、主に生鮮で出回るが、秋田の南の金浦や象潟では、干しアオサが楽しめる。これは日持ちするので、しばらく春を楽しむことが出来る。冷凍保存しておけば一年中楽しめる。下の写真は天日干しで板のり上に干しあげたもので、水分が無くなるためか、抜群の香ばしさと甘さに驚かさせる。その代わり、値段も高く感じるが、生鮮に比べて、嵩が少なくなるので当然のことだし、手間は考えれば、その価値はある。それに一年中、春を思い出すことができる。

 


 さらに暖かくなり、雪融けが進むと、磯の浅瀬は甘い水になって、アオサも姿を消すのだそうだ。最近は、自然そのものから四季の移り変わりを感じることが少なくなってきている気がする。人間も自然の一部に組み込まれ、本来、そこから抜け出すことは出来ないということを忘れているのでは無かろうか。春告藻を食べながらそんなことを考えたりする。

2013年4月2日火曜日

私、脱いでもスゴイモン?

 春分も過ぎた3月のとある日、ふらりと立ち寄った男鹿半島の鮮魚店。ヒラメにカレイ、ヤリイカも並んでる。それに春の訪れを実感させてくれるサクラマスも。そんなバラエティの中にあって、ひときわ眼を引く、凄い者を発見した。その名も「すごいもん」。秋田では「すごえもん」だったり「しげも」だったりするが、本名はケムシカジカ。店頭ではなかなかお目にかかることが無い魚だし、しかも安いので2匹ゲットした。

スゴエモン?

 「すごいもん」の呼び名は「凄いもの」に由来するとの説があるが、何が凄いのかと言えば、やはり、この顔か。たしかに魚なんだろうけれども、特に顔周りのデコボコにトゲトゲにヒラヒラ、それにボツボツの皮膚からは、まるでゴジラの親類にしか見えないし、大きな口からは本当に火でも吐き出しそうなくらいだ。



↑↑↑体の表面、まるで爬虫類
外観だけでも十分に凄いのであるが、中身も凄く美味いと云う。一昔前にあったエステのCMのように言えば「私、脱いでも凄い」らしい。
  しからばと、さっそく一匹を味噌鍋仕立てにすべく脱がしてみると、ペンキの入ったバケツをひっくり返したかの色の皮の下には、色白な肉が隠れている。その色白の肉は、タラ8:フグ2の割合で混ぜ合わせたような味と食感。少しきしむような弾力があるが、最後にはホロリと崩れていく。やはり脱いでからも少しは抵抗して欲しいのが男の心理だ(何のことだ)。上品で繊細なタラに少し野性味を加えた感じ。この野性味には味噌が良く合う。それにネギも合う。
↑↑↑脱がす前   ↓↓↓脱がせた後


  それに、胸ヒレの皮一枚下に隠れているゼラチン質の部分、このぷるぷるが甘くて美味い。ただし、ザラザラでちょっと接着剤のような雑味のある皮が口に入ってしまうと不味いので、やはり最初から全部脱いでもらったら良かったかもと少し後悔する。
  実は「すごいもん(ケムシカジカ)」の旬は、産卵期の秋から冬だと云う。鮮魚店のおばちゃんも、これからは味が落ちていくと言っていたが、果たして、肝はほとんど味が無い。それでも、柔らかいホルモンのような胃袋は結構美味かった。
  当然、旬のものを選ぶのが最良なのだろうけれども、いつでも楽しむには食べ方を工夫すれば良い。脱いだら全然凄くなくて、出ているはずのところが、ぺちゃんこだったり、凹むべきところが、凸だったりした場面に遭遇した時にどうするかを考えてみよう。そんな経験は無いので、想像力をたくましく働かせるしかないが、せっかく、そこまでたどり着いたのなら、どうにかしても食べるしかないし、食べるはずだ。


  ということで、2匹目は片栗粉でから揚げ。タラ8:フグ2のような肉質なので、美味くないはずが無い。皮の雑味も消えている。それに、しっかりと二度揚げにすれば、骨まで食べることが出来る。まさに骨まで愛して。やっぱり、私、脱いでも凄いもん。