2013年8月11日日曜日

レイシガイのスリル

  夏の味覚と聞かれて思い浮かぶ海の幸の一つにレイシガイがある。秋田ではニシガイやニシケッコと呼ばれたり、あるいは、食べると少し苦いような、辛いような味のあることからニガツブ(※1)、ニガダマ(※2)とかカレケッコとも呼ばれる。鳥取県ではタバコニシと呼ぶそうで(※3)  、そう言われると、確かにレイシガイのあの辛味は、タバコの葉が口に触れたときのようにも感じる。大きくても貝の高さは親指ほどの巻貝で、秋田では塩茹でにして食べることが多いが、生姜を効かせた味噌汁仕立てで食べる地域もある(※4)
 江戸時代、秋田を旅した紀行家の菅江真澄さんも、男鹿半島入道崎の水島で、「沖辛螺(おきたにし)」と呼ばれて、これを獲る漁師の姿を記している(男鹿の鈴風)。残念ながら、真澄さんは味についてはあまり興味が無かったらしく、詳しい記録を残していないが、「辛」の字が当てられていることからも、江戸の昔から、男鹿半島では、レイシガイを辛い貝として区別していたようだ。


 さて、塩茹での場合、ぐるぐるとトグロを巻いた小さな貝殻から、爪楊枝やマチ針を駆使して、これまた小さくて柔らかいトグロになった身肉をほじくり出して食べる。
 トグロの登り始めは肉の部分なので取り出しやすいけれど、五合目あたりから柔らかいワタになる。このワタが曲者で千切れやすいので、レイシ初心者は、必ずと言っていいほど、貝殻の中にワタを残してしまう。

塩茹で三年
「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」とは、ウナギ職人に使われる言葉であるが、レイシガイでも「塩茹で三年、ほじくり一生」というのがある。というのはウソですが、いつ千切れるかハラハラとしながらも、パーフェクトなトグロをスルリと取り出すまでのひとときは、スリル満点だ。


ほじくり一生
 ところで、レイシガイは肉食で、とくにイワガキの害敵としても知られている。そして、あの苦味(あるいは辛味)は、イワガキなど他の貝の殻に穴をあける時に分泌する酸なのだそうだ。
 だから、食べ過ぎると腹をこわすと言われている。といっても、これまで一度に20個くらい食べても平気であったが、もっと食べようか、もう止めようか、などと考えるのもレイシガイで味わえるスリルだ。

                                                 ※1 Facebook友達の山本さん私信
                                                 ※2  〃  佐々木さん私信
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